ナツメダカラ (1)
シンガポール・ウビ島とインドネシア・ビンタン島の貝

真野 進
(2005.11.20.)

ナツメダカラは、我が国では小笠原諸島、和歌山以南に分布すると言われている。しかし、生息数が少ないのか打ち上げ殻でさえも採集したことがなかった。今回、シンガポール・ウビ島とインドネシア・ビンタン島に生息するとの情報を得て採集に出かけ、下記の成果をを得たので報告する。

産地

個体数
(N)

殻高(L)mm

伸長度(L/W)

扁平度(H/W)

歯数(Teeth)

Mean

±

SD

Max

Min

Mean

±

SD

Mean

±

SD

内唇(C)

外唇(L)

ウビ

6

31.2

±

2.99

35.4

26.6

1.69

±

0.075

0.81

±

0.020

18.2

16.8

ビンタン

25

23.6

±

2.80

29.1

19.1

1.72

±

0.043

0.83

±

0.018

17.6

15.9

ウビ島では、海岸の開発が進み、海水の透明度も低く一見した所ではタカラガイの生息に適しないと思われる場所に生息していた。ここのナツメダカラは大きく、写真で見るように腹面の着色が顕著であった。同じ場所にナツメモドキも生息し、こちらも大型、腹面の着色という特色は同じであった。

ウビ島の個体


ビンタン島は、シンガポールから高速船で約1時間の距離にあリゾート開発が盛んだが、リーフエッジまで行くと沢山の珊瑚が見られた。ここのナツメダカラはシンガポールに比べると小さく、腹面の着色も幾つかの個体を除くと淡い傾向が見られた。しかし、ここの個体にはこの種には少ないと言われる背面の斑が多く見られた。又、ここの海でもナツメモドキが生息し、それらは同様に小さく、腹面の着色も淡色であった。

ビンタン島の個体

あさきちさんに教えて貰いました。特に、シンガポールの海は開発が進み、水も濁っておりここにタカラガイが棲むとは思えないような状態でした。ここで、これだけのポイントを探すのには相当の苦労があったことでしょう。何処の海へ行っても経験することですが、目的の貝の生息域を見つけるには相当の苦労が伴うものです。採集に行っても、限られた時間内にその生息域を見つけるのは至難の業で、今回のようにその海を知り尽くした方の案内を受けられたのは本当に幸いでした。