メダカラ(2)
三浦半島・三戸ー黒崎の打上貝

真野 進
(2000.11.29)

メダカラ(1)で三戸海岸で採集した貝の殻高、殻径、背高を測定し伸長度、扁平度につき考察したが、10個体と数が少なく信頼のおけるデータとはならなかった。そこで今回は個体数を100個とし、同様の検討を行った。

方法

  採集日  2000年11月22日 くもり、中潮
  採集地  三浦市三戸海岸漁港裏から黒崎まで
  採集法  浜に打ち上げられた貝を拾う。
  測定法  サイズ ノギスにて最小単位0.1mmまで測定(0.1mm以下四捨五入)。
  測定項目 殻長(size): 前端から後端までの長さ
       殻径(width):内唇側と外唇側の最大幅
       背高(hight):腹面から背までの高さ
       伸長度(elongate):殻長/殻径
       扁平度(depressed):高さ/殻径
  個体数  成貝(未成貝を含む)100個

結果及び考察

 1.測定結果

  殻長  最大20.1mm、最小10.4mm、平均15.2mm、標準偏差2.15で前回に較べ平均値で0.4mm小さかった。これは、前回のサンプリングによる誤差と考えられる。写真1に最大と最小個体を示す。


写真1


 伸長度  最大1.74、最小1.57、平均1.66、標準偏差0.036で前回とほぼ同じ結果となった。写真2に 最大と最小個体を示す。


写真2


  扁平度  最大0.84、最小0.78、平均0.80、標準偏差0.014で前回とほぼ同じ結果となった。写真3に 最大と最小個体を示す。


写真3

 三戸海岸付近のメダカラの殻高は今回の結果の様なものと考えて間違い無さそうである。但し、海岸で拾うときにどうしても大きめの貝に目が行き、小さな貝は見過ごされる可能性が高いことを考慮しなくてはならない。「しおさいガイドブック」によれば、三浦半島のメダカラの殻高は相模湾側よりも東京湾側の方が大きくなると言うことなのでそのような生息域による差があるものかどうか将来検討してみたい。
 伸長度、扁平度は Lorenzの"A Guide to Worldwide Cowry"に種の特徴を表すのに elongateとか、 depressedの表現がしばしば出てくる。 しかしこれらの表現は感覚的であり数字としての裏付けが無いように思われるので前回より、elongate を伸長度として、殻長/殻径で表し、 depressedを扁平度として背高/殻径で表してみた。結果は個体間のバラツキも少なく、使いようによっては統計処理による母集団推定に使える可能性がある。生息域、亜種、 種等による違いも調べてみたい。

 2.殻底の着色
前回、サンプルとした個体において、図鑑、購入した標本貝とは異なり、殻底(内唇側腹面)に着色があることが観察された。今回はサンプル数が多かったこともありさらに若干の観察を加えた。
写真4に、着色の濃い個体と、ほとんど着色の無い個体を示した。


写真4


ほとんど着色の無い個体は、100個中22個とほぼ1/4であった。三戸海岸のメダカラには一見して青黒いものと茶のものがあり、着色のない個体は全て茶色の貝であった。但し、茶色の個体でも 殻底が茶色に着色している物もあり、必ずしも色の違いだけでは無いようである。
写真5に、幼貝、未成貝を示す。
写真5
これを見ると、幼貝、未成貝では殻の色がそのまま出ている。成熟に従い 殻底部に滑層の沈着が起こり、その程度により殻の色が段々見えなくなると考えられる。つまり、よく言われるembryonal bandsの一種と言える。
色による違いは、白い滑層を通し黒い色は見えやすく、茶色は見えにくい為 であろう。
そうしてみると、この二回で採集された打上貝は比較的若い個体が多いと言うことが推察される。
今回の100個体中、螺頭部の形状、外唇の歯の発達状況などから未成貝と見られるものが13個体あり、このことを裏付けている。このようなことはタカラガイの生息域としてほぼ北限に近い三浦半島の初冬の海特有のことか、一般的なタカラガイの生活環の特徴か興味が持たれるところである。

あとがき
 前回に引き続き文献検索もないままのレポートですが、素人の趣味とお許し下さい。どなたか、タカラガイについてこのような文献をお持ちの方がいらっしゃいましたら是非お知らせ下さい。
また、用語の使い方等についても間違いも多いことと思いますが教えていただければ幸いです。

産卵に季節は関係があるのか、成熟にはどのくらいの日数がかかるのか、何年くらい生きるのか、色の違いは食べ物に関係があるのか、まず何を食べているのか、海草なのか、スポンジなのか、その種類は、大きさの違いはなぜ起こるのか、色々と分からないことばかりです。