先のメダカラ(16)で初めて生貝でのデータを得たが、同一海岸での打上貝よりも殻長が大きいという興味深いデータであった。この原因としては、打上貝の場合、海岸から一定の距離までの死殻が平均して採取できるのに対して、生貝ではその採集場所が制限されることによる偏りが考えられた。但し、両者の採集時期が若干ずれていたことが影響したとも考えられる。
そこで、今回は採集地点をやや北側の三戸海岸〜黒崎の間に変えて、生貝、打上貝を同時期に採集し測定した。
方法 | ||
採集日(Coll. Date) | 生貝 2001年11月-12月、打上貝 2001年11月13日 | |
採集地(Location) | 三浦半島(Miura Pen. )、三戸(Mito)-黒崎(Kurosaki) | |
採集法 | 潮間帯にて生貝採取(Live collected)、海岸にて打上貝採集(Beached) | |
測定法・測定項目 |
結果及び考察
測定結果まとめ
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(Coll. Date) |
(N) |
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(%) |
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Mean | ± | SD | Max | Min | Mean | ± | SD | Mean | ± | SD | 内唇(C) | 外唇(L) | ||||
打上貝 | '01.11.13. |
206 |
14.7 |
± |
1.72 |
21.3 |
10.9 |
1.65 |
± |
0.045 |
0.80 |
± |
0.015 |
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生貝 | '01.05-'01.08 |
100 |
15.0 |
± |
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19.9 |
11.4 |
1.67 |
± |
0.042 |
0.80 |
± |
0.015 |
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1.サイズ(L) size |
打上で、平均14.7mm、生貝で平均15.0mmと生貝の方が大きかった。 しかし、メダカラ(16)で見られたほどの差は無かった。 |
2.伸長度(W/L) elongate |
打上で、平均1.65、標準偏差0.045、 生貝で、平均1.67、標準偏差0.042、 と生貝でやや細長い傾向があった。 |
3.扁平度(H/W) depressed |
打上、生貝とも、平均0.80、標準偏差0.015と同じ値であった。 |
4.歯数 teeth |
今回は生貝のみのカウントで、内唇歯(columellar teeth)平均14.4、外唇歯(labral teeth)平均15.2個であった。 |
5.未成貝 junenile% |
未成貝と思われる個体数をカウントしたが、打上で6%、生貝で9%と大差はなかった。 |
6.歯と外唇縁の褐色彩 (brown color on teeth and labral margin) |
偶に歯が褐色に染まる個体があり、「日本近海産貝類図鑑」のメダカラもこのタイプであることを以前の報告で触れたが、淤見慶宏(相模貝類同好会講演)によれば、これは北限でのタカラガイ変異の一つであるとのことである。今回の採集でも下の写真のように歯が褐色に染まるも5個体、外唇の底面が黄色に染まるもの、外唇縁が錆色に染まるもの等が見られた。 |
あとがき
今回の採集時期は、11月ー12月の夜間でした。夜行性の貝がぞろぞろと隠れ家から出てきて餌場で宴会をしているのではと期待して出かけたのですが、案に相違してやはり岩の穴の中に隠れていました。寒く、真っ暗な中、懐中電灯の明かりを頼りに何日間も海の中を這いずり回り、やっと100個体を採集できました。風の強い日は波の音が不気味で、なぜこんな事をしているのだろうと自問しながらの採集でした。でも、偶には好いこともあり、獅子座流星群の有った夜は素晴らしい光景を海の中から見ることも出来ました。
1月に入り、水温が12-13℃と下がり、タカラガイもその姿をめっきりと減らしています。これからしばらくは打上貝のシーズンとなります。