コモンダカラ(5)
コモンダカラの成長 その2

真野 進
(2003.12.16.)

昨年に引き続き、コモンダカラの未成貝を採集できたので飼育下における成長と殻の変化を観察した。

試料及び方法

試料
個体No. 産地 採集日 採集場所
erosa02-01 三浦半島・三戸海岸 '02.11.21 潮間帯・岩の窪み
erosa02-03 三浦半島・油壺 '02.12.05 潮間帯・岩の窪み

飼育法
 30cm水槽(容積約8リットル)、自然海水にて飼育。冬期間25℃定温ヒーター設置。
 10日に一度程度、2リットルの水交換。
 餌は、ナミイソカイメンを給与。

結果及び考察

成長記録

erosa02-01

erosa02-02

月日

殻長 mm

殻長 mm

11.22

27.6

 

12.05

 

19.5

12.24

29.4

 

2.16

31.3
 

2.26
 

23.4

4.28

31.4

23.7

8.15

31.4

23.7

11.11

31.4

23.7

表の数値をグラフ化すると下図のようになる。(赤表示は昨年の記録)

幼貝より3ヶ月間で成長は止まる。

個体、erosa02-01の画像

飼育1ヶ月でほぼ成貝となった。コモンダカラの特徴の一つである斑も内唇側にそれから1ヶ月程度で形成された。その後、外唇側にも出てくるかと観察していたが出現しなかった。

個体、erosa02-02の画像

こちらは上の個体より小さい段階で採集、飼育を始めた。成貝になるのは同じ様なペースであったが、萎縮した様な形になった。

殻測定結果

  

erosa02-01

erosa02-02

殻長(L)mm

31.4

23.6

殻幅(W)mm

17.3

12.9

背高(H)mm

13.3

10.2

伸長度(L/W)

1.815

1.837

扁平度(H/W)

0.769

0.791

内唇歯数(CT)個

15

14

外唇歯数(LT)個

19

18

2個体とも伸長度(L/W)が1.8以上とコモンダカラとしては異常に細長い形となった。これは飼育下という特殊な環境が原因していると推察されるが、昨年の飼育個体ではこのような現象は見られなかったことから断定は出来ない。

あとがき
 昨年は飼育2ヶ月余りで死んでしまったので、今年は長期飼育を目指してストレスを与えないよう注意しました。その結果約一年間飼育する事が出来ました。しかし、水温の所為か、偏った栄養の所為か分かりませんが海で採集される個体とは随分異なったものとなりました。又、幼貝から成貝の形になるまでは行くのですが、所謂老成した様な形にはなりませんでした。一年間では無理なのか、老成型にするには別の要因が必要なのか・・などと考えております。