オミナエシダカラ(3)
房総半島の打上貝

真野 進
(2001.03.18.)

 オミナエシダカラは、房総半島でも三浦半島と同じく各地の海岸で拾うことが出来る。このことは、このタカラガイがあまり棲息域を選ばない性質であることを示しているように見える。また、別名チチカケナシジダカラと云われるように白い層で背の模様が覆われる個体があるが、今回殻を切って層の沈着程度を見ることとした。
方法
採集日(Coll. Date) 2001年2月ー3月
採集地(Location) 房総半島(Boso Pen. )
採集法 打上貝を拾う。(Beached)
測定法・測定項目

結果及び考察

 測定結果

1.サイズ(L)
size
 
最大36.4mm、最小23.5mm、平均29.5mm、標準偏差2.70で、最大、最小個体は三浦半島産より大きかったが、平均ではほぼ同じであった。
2.伸長度(W/L) 
elongate
最大1.76、最小1.48、平均1.63、標準偏差0.052であった。この値は、三浦半島産と比べやや小さかった。
3.扁平度(H/W)
depressed
最大0.82、最小0.68、平均0.77、標準偏差0.026であった。この値も、三浦半島産と比べやや小さかった。このように、伸長度、扁平度共に値が小さいのは、成熟が進んでいる個体が多い為とも考えられる。
4.歯数
teeth
内唇歯14ー21、平均17.6、外唇歯16ー24、平均18.7個であった。
5.未成貝
junenile%
未成貝と思われる個体数をカウントしたが、103個中4個、4%と三浦半島産とほぼ同じであった。
6.成熟と殻の厚さ
thickness of shell
殻厚(mm)

No.

内唇底面

外唇辺縁
成熟に伴い殻が厚くなる現象は、オミナエシダカラでも見られる。今回測定に使用した中から、成熟段階が異なると見られる5点を選んで殻厚を測定した。測定個所は、背、内唇底部、外唇辺縁の3カ所(写真参照)で測定にはノギスを使った。結果は表のとおりで、成熟に従い劇的に厚さを増していることが確認された。
10 0.63 0.63 0.56
20 0.90 1.16 1.21
2 0.74 0.91 1.44
39 1.02 1.53 1.93
52 1.65 2.18 2.85

写真1




あとがき
 ハナマルユキほどではありませんが、オミナエシダカラでも成熟により、側面が横に張り出し、底面も厚くなることがわかりました。また今回、乳掛と云われる乳白色の模様は、底面、辺縁に沈着する滑層が背面にまで伸びた結果であることが殻の断面から見て取れました。
 房総と、三浦の比較では、その大きさなど驚く程良く似た値を示しました。ただ、サンプリングの偏りも有るかも知れませんが、房総産の方が成熟が進んだ物の割合が高いことが推察されました。