昨年5月に、根本・坊田の浜でチャイロキヌタの測定を行い、この二つの浜では殻長に差が見られないこと、2月の測定に比べ平均殻長が小さくなる傾向があることを報告した。-チャイロキヌタ(9)- 今回はこの二つの浜に加え、布良の浜でもサンプルを拾うことが出来たので又測定を行った。 |
方法 | ||
採集日(Coll. Date) | 2002年9月19日〜20日 | |
採集地(Location) | 房総半島、布良、根本と坊田の浜を分けて採集した。 | |
採集法 | 打上貝を拾う。(Beached) | |
測定法・測定項目 |
結果及び考察
測定結果
産地
(Location)個体数
(N)殻高(L)mm 伸長度(L/W) 扁平度(H/W) 亜成貝
(%)Mean ± SD Max Min Mean ± SD Mean ± SD 布良 315 17.7 ± 1.63 21.7 13.1 1.68 ± 0.052 0.82 ± 0.017 1.3 根本 289 16.8 ± 1.80 23.7 12.4 1.68 ± 0.055 0.82 ± 0.019 1.7 坊田 408 16.7 ± 1.82 21.4 11.9 1.65 ± 0.056 0.82 ± 0.029 1.2 合計 1012 17.0 ± 1.81 23.7 11.9 1.67 ± 0.056 0.82 ± 0.023 1.4
1.殻長(L) size |
平均殻長は布良が他の浜に比べ1mmも大きく、根本、坊田の差は小さかった。ただ、最大個体は根本、最小個体は坊田のサンプルの中より出た。三カ所の平均殻長は17.0mmで、2001年2月の測定よりも0.3mm小さくなった。 |
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分布図を見ると布良の個体群は他二カ所の個体群に比べ全体的に大きいことが分かる。 幾つかの飛び抜けて大きい個体が混じると平均を押し上げることがあるが今回の結果は明らかに群としての特徴と考えられる。 |
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根本と坊田の分布図はほぼ同じ形を示している。 23.7mmの最大個体が飛び抜けて大きいことが分かる。 |
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最小個体、11.9mmはこの群から出たが、大きい個体と違い飛び抜けて小さいのではなく連続した群の中の一つであることが分かる。 |
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サンプル数が1,000を越えると流石に正規分布に従うような分布図になる。 |
2.伸長度(W/L) elongate | 布良1.68、根本1.68、坊田1.65と今までのチャイロキヌタのデータに比べ、全体にやや細長い傾向がある。 |
3.扁平度(H/W) depressed |
三カ所ともこの値が0.82となり、今までのチャイロキヌタのデータに比べ、全体にやや背が盛り上がる傾向がある。 |
4.亜成貝% young shells |
今までこれを未成貝として扱ってきたが、亜成貝とした方がよいと思われるので今回より改める。南房総チャイロキヌタの打上殻には比較的少ない傾向がある。これは、若い貝の減耗率が少ないか、又は成長が早いかどちらかに原因があると思われる。 |
あとがき チャイロキヌタはメダカラと並んで多く打ち上げられる貝ですが、今回ほど一度に沢山拾えたのは初めてでした。今回の測定では、布良の個体群が根本、坊田の二群と比べ特徴的に大きかったのが印象的でした。これらの浜は南房総の連続した浜で、距離的には10kmも離れていないのに何故このような違いが出るのか不思議です。丁度、三浦半島の三戸浜の黒崎側、小網代側で見られた違いと共通する何かがあるのでしょう。 又、私がこのような測定を始めて約二年が経ちますが、毎回測定の度に殻長が小さくなる傾向があります。この間、黒潮の流れが大蛇行型から直行型に変わって、全体として水温が高くなっていると考えられますが、このことと関係があるのかどうか興味深いことです。 |